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1月12日

2005(水) ぬるぽライター

 「彼氏?」
 「ちがうよ」
 「えっ、ちがうの?」
 「うん」
 「ジャッキーさん、でしょ?」
 「そだよ」
 「彼氏じゃないの?」
 「だから、違うって。」
 「そうなんだ…、いや、やっぱ、本当は彼氏だ!」
 「違うってば」
 「だって、いつもカノウくんが、ジャッキーにはもったいないとかって言ってるから」
 「それは、カノウくんの言うことだから…」
 「彼氏じゃないの?」



 「彼女じゃないの?」
 「マンネリの関係」



 キャプテン・シップ。
 いや、ほんとに。

 日本現代文化論という浅羽通明先生の授業。
 出席してもしなくても、試験さえ受ければ、成績は優か良しかつけない。
 しかも出席しててもしてなくても授業とは全く関係ない内容がテストには出題される。
 だから出席する必要はない。
 だから本当に興味のある人しか出席しない。
 300人入る教室に、いつも人はまばら。20~30人いたらいいほうか?


 でももうすぐテスト期間だからっつって、
 今日は学生が押し寄せた。
 いつもの5倍は。


 したら先生、怒った。


 よく考えたら当たり前。
 先生も仰っていたが、プリントはせいぜい数十枚しか用意してないんだから。
 テスト日程を聴きに来ただけの学生が100人以上押しかけたら迷惑以外の何物でもないわけだ。
 先生は試験の日程を発表したあとで言った、
 「試験の日程を聴きに来た人は帰って下さい。これは冗談じゃありません、本気です」
 うん、これ本気なんだよね。
 それがわかんないんだ。
 「なかなか人が減らないから、説教でもしようか」と言って、先生はまた話し始めた。


 要旨。
 「こっちはテストに何か書きさえすれば優か良をやると言っている。テストの内容も授業とは関係がない。従ってテストの範囲や問題を発表したりすることなんかあるはずもないし、その意味もない。テスト日程なんかは事務所に行くか掲示板を見ればわかる話なのに、なぜわざわざ教室まで来るのか。それは俺(浅羽)を信用してないということなのか。非常にムカつく。
  偏差値の低い学校ほど、ふだん俺の授業に来てない奴らがテスト前にどっと押しかけてくる傾向が強くある。それはなぜかというと、なんとなくワヤワヤやってくるというだけの話だ。特に必要性を自分から見出せなくても、みんなが行くようだから自分も行く。そうやって不安感を拭い去ろうとするのは愚民大衆の社会学的心理であって、間違っているとは言わない。むしろ、そういう愚民的傾向が偏差値の低い大学ほど顕著だというのは興味深いというか、妙に納得できてしまう。と、思っていたのだが、早稲田大学でも今日のあなた方のようにワヤワヤと押し寄せて来るというのは、早稲田もそのレベルに落ちたということですか?
  もう一度言います、試験云々でここに来た人は、帰ってください。」


 ここで、浅羽通明大先生は本当にムカついていて、本当に帰って欲しいと思っている。
 そして僕ら、毎回授業に来ているオタク連中も、浅羽先生の講義を楽しみにしてここに来ているわけだから、このまま講義が始まらないでは溜まったものではない。要するにノンポリ連中のおかげで革命的インテリゲンチャに憧れるオタク連中は迷惑を被っているというわけ。

 ところがね、なかなか帰ろうとしない。
 意地を張っている、或いは浅羽先生に反抗心を抱いている、というのなら、まだいい。
 まずいのは、勘違いしてる奴。絶対、いたと思う。さすがに浅羽先生が無言になってしばらく経ったら、「あ、この人ホントに帰って欲しいんだ」って気付いただろうが、最初のうちは勘違いくんもいたと思うなあ~。
 だって、「先生」が「帰れ」って言うときって、ほぼ例外なく「帰ったらまずい状況」だもんね。そこで本当に帰っちゃったら、「なんだアイツ」ってことになる。小学校とかだと、そうでしょ。ホントに帰ったらバカじゃん。そういうのに身体がなれちゃってるもんだから、帰ることができない。非インテリなノンポリは、特に。だから浅羽先生もわざわざ「これは冗談ではなく」なんて言わなければいけないわけだ。「先生」が「帰れ」「出ていけ」というときっていうのは、「出て行かなくてもいいから、真面目にやりなさい」というメッセージであることが圧倒的に多いから。

 この状況では、浅羽先生をはじめ、ふだん授業に出ているオタクたちはみんな迷惑しているわけだから、ノンポリの方々はそれを察知して、早々と教室を出て行くべきだったのだ。普通に考えればわかること。自分で状況を判断する能力と、公共性を尊重する精神が備わっていれば、自然にできることっしょ?
 でも、できないんだよね。愚民だから。みんなが出ていくのを確認してからじゃないと、動けない。前のほうに座ってた人(ノンポリ側)が、僕の友達(オタク側)に、こう言った。「みんな、帰りますかね?」おばか。あなたはあなたの判断で行動すべきよ。
 硬直しちゃってんのね、みんな。動かないの。タイミングを逃したのかしんないけど。自分で判断して、「自分はこの場にいちゃいけない、いたら誰かが迷惑する」って思ったら、出てけよ。大人なんだから。「私はちゃんとこの授業に興味があってここにいます」なんて顔して座ってんじゃないっての。とぼけちゃって、ウソつくのやめろよ。自己満足か?単なる意地か?とにかく、そのタイド、他人に迷惑かけてるんだって自覚してとってるタイドなの?

 人数がある程度減ったら授業が始まった。結局、一度も見たことない顔の人々がたくさん授業を最後まで受けてった。今回は橋本治の話題で、けっこう面白かったから、良かったかな。苦痛じゃなかったと思うけど、自分の興味ない、しかも理解できない(あの授業はいっぺんじゃ理解できねーだろーふつう)話を聞かされるはめになるんだから、みんなはやいとこ帰ったほうがよかったんだよ。まったく…。あそこで意地張って教室に残ることで得られたのはなんだ?せいぜい「教訓」でしょ?誰のためにもならない。

 単に、他人のことを考えてないだけなのかなあ。そういう人間は、僕だけで充分だと思うんだけど。
 日本にはコゲどんぼが一人いれば充分なように。

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