山そう村の大事けん
ある山おくに、山そう村という村がありました。その村には、アリツルというとてもえらい村長がいました。
しかし、その村長さんが、ある日、病気にかかってしまいました。でも、この村には、薬屋がありません。
そこで、村長代りは、こんなおふれを出しました。
「村のしゅう、一つ、たのみがある。村長が病気にかかった。まよいの森を通って、となり町まで薬をとりに行ってくれる、ゆう気のある者は、わしの家にこい。」
村長代り
この話を聞いた、刀じまんの村人たちも、となり町に行こうとはしませんでした。なぜなら、となり町に行こうとして、帰って来た者はいないからです。
ところがある日、村長代りの家に、一人のアリの子どもがやってきました。
「ピンポーン、ピーンポーン。」
子どもがブザーをおしています。
「だれだね。」
村長代りがドアを開けたとたん、「ガアン。」という音とともに、子どものすがたがきえてしまいました。
「今、ブザーをならした者はどこじゃ。」
「ここだよ~。」
と言って、ドアとかべの間から、子どもがでてきました。
「なんだ、アリキチくんじゃあないか。」
「そうです。」
じつはこの子ども、村長のむす子、アリキチくんなのです。
「で、何の用かね、アリキチくん。」
「村長代りさん、今、お父さんの薬をとりに行ってくれる人をさがしているんでしょう、ぼくがいくよ。」
「えっ、アリキチくんが行くのかい、でも、一人だけじゃきけんだよ。第一、きみは、まだ子どもじゃないか。」
「大じょうぶ、大じょうぶ、友だちのアリ太ろうくんたちといっしょに行くからさ、まぁ、まかせてちょうだいよ。」
「………。」
「そうか。では、行ってこい。ほれ、これが、となり町までの地図じゃ。」
「ありがとう。」
アリキチくんは、地図をもって、村長代りの家を出ました。そして、いっしょにとなり町まで行く、なかまを集めました。そのけっか、アリキチくんをふくめ、五人、あつまりました。その五人の名前は、右から、アリンコくん、アリよしくん、アリキチくん、アリ太ろうくん、アリみつくん。、この五人です。
さっそく、出かけることにしました。
村長代りにもらった地図によると、まず、大きなたにがあり、そこをこえると、まよいの森に出ます。森をぬけると、となり町につきます。
「さぁ、行くぞ。」
と、アリキチくん。
「オーーー。」
と、みんな。
まず、たにだ。たにをこえようにも、こえる道具がありません、だから、手足が自由にのびる、アリンコくんが、アリ橋になります。
「ありがとう、アリンコくん。おかげでたすかったよ。」
四人がわたり終わった時、アリンコくんの手がすべって、落ちてしまいました。
「ギニャーたすけてー。」
「いやだ。」
と、アリキチくんが言いました。
「さぁ、行こうか。」
「アリキチーよくもーこんなことをしておいて、ただですむと思っているのか。」
「さぁね。」
「………ガクッ。」
アリンコくんは死にました。
たにをぶじにこえたアリキチくんたちは、森へ行くことにしまにた。
「森が見えてきたぞ。」
アリキチくんが言いました。
「森だ。」
アリ太ろうくんも言いました。
「なに、森。」
とアリよしくん。
「なんだって、森だって。」
アリみつくんも言いました。
「わーい」
と言って、アリみつくんが一番に走って行きました。
「おーい、一人でとおくへ行くとあぶないよー。」
アリ太ろうくんの注意をむしして、アリみつくんは走って行きました。
「ズボッ。」
とおくで音がしました。いそいで行ってみると、そこに大きなおとしあながあいていました。その中をのぞいてみると、なんと、そのあなの中には、アリみつくんが入っていたのです。
「たすけてー。」
「いやだ。」
きっぱりとアリキチがそう言いました。
「いつかおまえにしかえしやる~。」
「すれば。」
「………。ガクッ。」
アリみつくんは死にました。
「さぁ、行こうか」
「オーーーー。」
森に入って、しばらく走くと、アリよしくんがアリ地ごくにつかまいました。
「たすけてー。」
「いやだ。」
また、きっぱりと、アリキチくんが言いました。
「アリキチ、いつかおまえにふくしゅうしてやる。」
森をぬけると、道ろがあり、そこをあるいていると、どこからともなく、大岩がふってきました。
「アリキチ、あぶない。」
アリ太ろうくんが、アリキチくんを、つきとばしました。
「うぎゃー。」
という声とともに、アリ太ろうくんは、大岩につぶされました。
「たすけてー。」
「いやだ。」
きっぱりと、アリキチくんが言いました。
「アリキチーいつかかならずきさまふくしゅうしてやる。」
多少のぎせいはあったものの、アリキチくんは、ぶじ、となり町までたどりつきました。
アリキチくんは、旅のつかれをいやすため、やどに行きました。
アリキチは、のろわれそうという店に入って行きました。
「えー一ぱく一円ですが。」
「安いな、よし、とまろう。」
アリキチがふとんに入ると、ドアがしまり、へやが暗くなりました。
「アリキチ。」
どこかで聞いた声です。
「アリキチ、オレだよ、アリ太ろうだよ。アリよしや、アリみつ、アリンコもいるぞ。おまえにふくしゅうするため、天国からよみがえったんだよ。言っただろ、いつかきさまにふくしゅうしてやる。とな。」
アリキチくんは、四人にのろわれ、死にました。そして、アリキチくんは地ごくへ行き、四人は、天国へ帰って行きました。
そのころ、村では、村長が病気で死んでいました。
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